小部経典

3:ウダーナ

2.6. 妊婦の経(16)

 このように、わたしは聞きました。或る時のことです。世尊は、サーヴァッティに住しておられます。ジェータ林のアナータピンディカ〔長者〕の園地において。さて、まさに、その時、或るひとりの遍歴遊行者に、妊婦で臨月の、若く幼い夫人がいます。そこで、まさに、その女性遍歴遊行者(妊婦)は、その遍歴遊行者に、こう言いました。「婆羅門よ、あなたは、行って、油を持ってきてくださいな。お産するわたしのために成るのですから」と。

 このように言われたとき、その遍歴遊行者は、その女性遍歴遊行者に、こう言いました。「愛しい方よ、では、わたしは、どこから、油を持ってくるのだい」と。再度また、まさに、その女性遍歴遊行者は、その遍歴遊行者に、こう言いました。「婆羅門よ、あなたは、行って、油を持ってきてくださいな。お産するわたしのために成るのですから」と。再度また、まさに、その遍歴遊行者は、その女性遍歴遊行者に、こう言いました。「愛しい方よ、では、わたしは、どこから、油を持ってくるのだい」と。三度また、まさに、その女性遍歴遊行者は、その遍歴遊行者に、こう言いました。「婆羅門よ、あなたは、行って、油を持ってきてくださいな。お産するわたしのために成るのですから」と。

 さて、まさに、その時、コーサラ〔国〕のパセーナディ王の貯蔵庫では、あるいは、沙門のために、あるいは、婆羅門のために、あるいは、酥“そ”(バター)を、あるいは、油を、義(必要)とするだけ、飲むことが許されています。運び出すことはできませんが。

 そこで、まさに、その遍歴遊行者は、こう思いました。「さて、まさに、コーサラ〔国〕のパセーナディ王の貯蔵庫では、あるいは、沙門のために、あるいは、婆羅門のために、あるいは、酥を、あるいは、油を、義(必要)とするだけ、飲むことが許されている。運び出すことはできないが。それなら、さあ、わたしは、コーサラ〔国〕のパセーナディ王の貯蔵庫に行って、油を、義(必要)とするだけ、飲んで家に帰って〔そののち〕、吐き出して与えてはどうだろうか。お産するこの者のために成るのだから」と。

 そこで、まさに、その遍歴遊行者は、コーサラ〔国〕のパセーナディ王の貯蔵庫に行って、油を、義(必要)とするだけ、飲んで家に帰って〔そののち〕、〔飲んだ油を〕上に為すこともできなければ、いっぽうで、下に〔為すこと〕もできません。彼は、強烈で、荒々しく、辛辣な、諸々の苦痛の感受に襲われ、ころがり回り、のたうち回ります。

 そこで、まさに、世尊は、早刻時に、着衣して鉢と衣料を取って、サーヴァッティに〔行乞の〕食のために入りました。まさに、世尊は、その遍歴遊行者が、強烈で、荒々しく、辛辣な、諸々の苦痛の感受に襲われ、ころがり回り、のたうち回っているのを見ました。

 そこで、まさに、世尊は、この義(道理)を知って、その時に、この感興〔の言葉〕を唱えました。

 「まさに、彼らが、無一物であるなら、〔彼らは〕安楽の者たちである。なぜなら、〔真の〕知に至る人たちは、無一物であるからである。所有ある者を見よ――打ちのめされている。人は、人にたいし、結縛の心あるもの(人は、所有の思いに悩まされる)」と。

 〔以上が〕第六〔の経〕となる。