小部経典

3:ウダーナ

4.4. 夜叉の打撃の経(34)

 このように、わたしは聞きました。或る時のことです。世尊は、ラージャガハ(王舎城)に住しておられます。ヴェール林のカランダカ・ニヴァーパ(竹林精舎)において。さて、まさに、その時、尊者サーリプッタと、尊者マハーモッガッラーナとが、カポータカンダラーに住しておられます。さて、まさに、その時、尊者サーリプッタは、月明かりの夜、髪を新しく剃り下ろし、野外に坐しておられたのです。或る一つの〔心の〕統一に入定して。

 さて、まさに、その時、二者の夜叉の仲間が、北方から南方へと赴きます。或る何らかの用事があって。まさに、それらの夜叉たちは、尊者サーリプッタが、月明かりの夜、髪を新しく剃り下ろし、野外に坐しておられたのを見ました。見て、一者“ひとり”の夜叉が、第二の夜叉に、こう言いました。「友よ、わたしは、この沙門の頭に、打撃を与えたいと思う」と。このように言われたとき、その夜叉(第二の夜叉)は、その夜叉(第一の夜叉)に、こう言いました。「友よ、やめなさい。沙門を攻撃してはいけない。友よ、彼は、秀“ひい”でた者だ。沙門は、大いなる神通ある者だ、大いなる威力ある者だ」と。

 再度また、まさに、その夜叉(第一の夜叉)は、その夜叉(第二の夜叉)に、こう言いました。「友よ、わたしは、この沙門の頭に、打撃を与えたいと思う」と。再度また、まさに、その夜叉(第二の夜叉)は、その夜叉(第一の夜叉)に、こう言いました。「友よ、やめなさい。沙門を攻撃してはいけない。友よ、彼は、秀でた者だ。沙門は、大いなる神通ある者だ、大いなる威力ある者だ」と。三度また、まさに、その夜叉は、その夜叉に、こう言いました。「友よ、わたしは、この沙門の頭に、打撃を与えたいと思う」と。三度また、まさに、その夜叉は、その夜叉に、こう言いました。「友よ、やめなさい。沙門を攻撃してはいけない。友よ、彼は、秀でた者だ。沙門は、大いなる神通ある者だ、大いなる威力ある者だ」と。

 そこで、まさに、その夜叉(第一の夜叉)は、その夜叉(第二の夜叉)に取り合わずして、尊者サーリプッタ長老の頭に打撃を与えました。その打撃によって、象を、あるいは、七ラタナ(長さの単位・一ラタナは約三十センチ)、あるいは、七ラタナ半、〔地面に〕沈めてしまうであろう――あるいは、大きな山の頂を粉砕してしまうであろう――それほどまでに、大きな打撃でした。そこで、また、いっぽう、その夜叉は、「焼かれる」「焼かれる」と言って、まさしく、その場で、大地獄に落ちました。

 まさに、尊者マハーモッガッラーナは、人間を超越した清浄の天眼によって、その夜叉が、尊者サーリプッタ長老の頭に打撃を与えているのを見ました。見て、尊者サーリプッタのおられるところに、そこへと近づいて行きました。近づいて行って、尊者サーリプッタに、こう言いました。「友よ、どうでしょう、あなたは、大丈夫ですか。どうでしょう、順調ですか。どうでしょう、何かしら、苦痛はありますか」と。

 「友よ、モッガッラーナよ、わたしは、大丈夫です。わたしは、順調です。友よ、モッガッラーナよ、ですが、ただ、わたしの頭に僅かな苦痛があります」と。

 「友よ、サーリプッタよ、めったにないことです。友よ、サーリプッタよ、はじめてのことです。それこそ、尊者サーリプッタは、大いなる神通ある者です、大いなる威力ある者です。友よ、サーリプッタよ、ここに、或るひとりの夜叉が、あなたの頭に打撃を与えました。その打撃によって、象を、あるいは、七ラタナ、あるいは、七ラタナ半、〔地面に〕沈めてしまうであろう――あるいは、大きな山の頂を粉砕してしまうであろう――それほどまでに、大きな打撃でした。そこで、また、いっぽう、尊者サーリプッタは、このように言いました。『友よ、モッガッラーナよ、わたしは、大丈夫です。わたしは、順調です。友よ、モッガッラーナよ、ですが、ただ、わたしの頭に僅かな苦痛があります』」と。

 「友よ、モッガッラーナよ、めったにないことです。友よ、モッガッラーナよ、はじめてのことです。それこそ、尊者マハーモッガッラーナは、大いなる神通ある者です、大いなる威力ある者です。なぜなら、まさに、そこに、夜叉をもまた見るからです。いっぽうで、わたしなどは、今現在、泥鬼さえも見ません」と。

 まさに、世尊は、人間を超越した清浄の天耳の界域によって、彼らの、大いなる龍たる両者の、〔まさに〕この、このような形の話題ある会話を聞きました。

 そこで、まさに、世尊は、この義(道理)を知って、その時に、この感興〔の言葉〕を唱えました。

 「彼の心が、巌“いわお”の如くに安立し、動揺せず、諸々の染まるべきもの(欲望の対象)に染まらず、諸々の怒るべきことに怒らないなら――彼の心が、このように修められたなら――彼に、どこから、苦しみが至り行くというのだろう」と。

 〔以上が〕第四〔の経〕となる。