小部経典

3:ウダーナ

5 ソーナの章

5.1. より愛しいものの経(41)

 このように、わたしは聞きました。或る時のことです。世尊は、サーヴァッティ(舎衛城)に住しておられます。ジェータ林のアナータピンディカ〔長者〕の園地(祇園精舎)において。さて、まさに、その時、コーサラ〔国〕のパセーナディ王は、マッリカー妃と共に、優美な高楼(テラス)の上に居たのです。そこで、まさに、コーサラ〔国〕のパセーナディ王は、マッリカー妃に、こう言いました。「マッリカーよ、いったい、まさに、あなたにとって、自己より他に、何であれ、より愛しいものが存在するだろうか」と。

 「大王よ、まさに、わたしにとって、自己より他に、何であれ、より愛しいものは存在しません。大王よ、では、あなたにとって、自己より他に、何であれ、より愛しいものが存在しますか」と。「マッリカーよ、まさに、わたしにとってもまた、自己より他に、何であれ、より愛しいものは存在しない」と。

 さて、まさに、コーサラ〔国〕のパセーナディ王は、高楼から降りて、世尊のおられるところに、そこへと近づいて行きました。近づいて行って、世尊を敬拝して、一方に坐りました。一方に坐った、まさに、コーサラ〔国〕のパセーナディ王は、世尊に、こう言いました。

 「尊き方よ、ここに、わたしは、マッリカー妃と共に、優美な高楼の上に居たのですが、マッリカー妃に、こう言いました。『マッリカーよ、いったい、まさに、あなたにとって、自己より他に、何であれ、より愛しいものが存在するだろうか』と。このように言われたとき、マッリカー妃は、わたしに、こう言いました。『大王よ、まさに、わたしにとって、自己より他に、何であれ、より愛しいものは存在しません。大王よ、では、あなたにとって、自己より他に、何であれ、より愛しいものが存在しますか』と。このように言われたとき、尊き方よ、わたしは、マッリカー妃に、こう言いました。『マッリカーよ、まさに、わたしにとってもまた、自己より他に、何であれ、より愛しいものは存在しない』」と。

 そこで、まさに、世尊は、この義(道理)を知って、その時に、この感興〔の言葉〕を唱えました。

 「全ての方角を、心して訪ね回ってみたが、どこにおいても、自己よりもより愛しいものに、ついに、到達しなかった。このように、他者たちにとって、個々〔それぞれ〕の自己は愛しいものであり、それゆえに、自己〔の幸せ〕を欲する者は、他者を害さぬもの」と。

 〔以上が〕第一〔の経〕となる。